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130th ANNIV. SPECIAL WEB MAGAZINE Advance! キャリア形成と自立志向を「ジブンゴト化」するウェブマガジン

vol.6

卒業生の社長にインタビュー!

共立社長のオキテとホンネ

「あえて“100%を目指さない”。肩の力を抜いたほうが、仕事はスムーズにまわる」/添田有美さん

2017.04.14

ヨーロッパの雰囲気をイメージした手芸のセレクトショップ「Merceria Pulcina(メルチェリア プルチーナ)」。お店のオーナーとして店舗経営をしながらソーイングレッスンの講師、手芸や旅の本を10冊以上出版するなど、添田さんの活動は多岐に渡ります。手芸好きに愛されるお店へと成長させた秘訣、そして夢を叶えるヒントを教えていただきました。

「Merceria Pulcina」オーナー

添田有美さん

共立女子大学家政学部被服学科卒業後、印刷会社に入社し、事務職、営業職に従事。その後、人気洋菓子店を有する会社に入社し、販売員などを経験。27歳で結婚。2006年9月、代官山の手芸店「Merceria Pulcina」をオープン。2013年には、兵庫県の西宮阪急百貨店に二号店を出店。『まっすぐ切って、まっすぐ縫うだけの服』など著書多数。初心者向けのソーイングレッスンは、丁寧でわかりやすいと定評がある。

妊娠を機に、手芸に開眼!
“屋外の手芸屋”を立ち上げることに

――結婚後、ご主人の地元である代官山に「メルチェリア プルチーナ」を立ち上げた添田さん。手芸店をオープンしたのは、ある思いがけない“幸運”が舞い込んできたのがきっかけでした。
 
「夫の親戚が代官山にガレージを所有していたのですが、その軒先を『好きに使っていいよ!』と声をかけてくれて。ちょうど妊娠を機に被服学科卒業の血が騒ぎ(笑)、ベビー服やスタイ、ワンピース、バッグを大量に作っていた時期だったので、フリーマーケット形式で販売したら面白いかも!と思ったんです」
 
――こうして、“屋外の手芸屋”をオープン。週2日の限定ショップではありましたが、“イタリアの蚤の市”をイメージした可愛い店構えが話題を呼び、思いのほか大盛況!
 
「家からテーブルを運び、布を結んでテントを張って…。学生時代からイタリアが好きだったので、店構えのイメージはすぐに固まりました。ちなみに、店名もイタリア語。“メルチェリア”は手芸屋、“プルチーナ”はひよこという意味です。“プルチーナ”は、女の子への呼びかけの言葉でもあるので、娘がいる私に心地よくフィットして。(フリマ形式での販売なので)店名なんて必要ないのに、はりきって名付けました(笑)」
 
――その後も順調に続けていたものの、夏を前にしてある問題に直面。お店は存続の危機を迎えます。
 
「布のテントなので、雨が降ったら店じまい(苦笑)。それにオープンした春から季節が進むにつれて、“炎天下にずっと立っているのは難しいな”と悟りました…。“中のスペースを使わせてもらえないかな?”とガレージ内を探索していたら、親戚が『本気でやるなら、店舗として自由に使っていいよ』と提案してくださって。それだけでありがたいのに、なんと改装費用も貸していただけることになりました。思わぬ展開に少し悩みましたが“一生に一度のチャンス”と捉え、本格的にお店を立ち上げることにしたんです」

大人の女性がかわいいと思えるものを選べば、必ず売れる

▲今流行りの「リバティ?プリント」の生地もズラリ。手前にあるミシンは、おばあさまの形見なんだとか

――心機一転、ガレージを改装した店舗で自分のお店を始めた添田さん。それを機に自身で製作した作品以外に、インポートの生地、ボタンやアップリケなどの手芸用品の販売も始めます。
 
「通常、生地を販売する際は問屋を通すのですが、業界の普通が分からない。なので直接生地メーカーに電話をして、『取り扱いたいんです』と直談判しました。この作戦で人気ブランド『ソレイアード』を取り扱う(株)サンヒットさんとも直接取引しています。ソレイアードなど商品はすべて『ママだけでなく、普段セレクトショップや百貨店でお買い物しているような独身のOLさんもかわいいと思える』ものだけを買い付けています。とっておきばかりを仕入れているので、届いた商品をお店に並べている瞬間が本当に幸せ。きっと、ひとりでニンマリしているはず(笑)」
 
――一方で「売れなかったらどうしよう」「借金が増えるのが怖い」などと不安に思うことはなかったのでしょうか?
 
「在庫が大量に余ったりしないよう“手の届く範囲で、少しずつ規模を広げる”と決めています。例えば、オープンした当初は生地の追加発注はまとめて買うのではなく、一反、二反と少量ずつ購入して、無駄が出ないように注意していました。今も他店に比べて在庫はかなり少ない方だと思います。また“今おしゃれでかわいいものは何か”、“プルチーナのお客様はどんなものを求めているのか”をいつも考えて仕入れをしているので、あまり不安に感じることはありません。厳しい言い方かもしれませんが、売れるものが何かわからないなら、お店を開く資格はないかなと思っています」
 
――「それに売上が悪くても、リスクヘッジできます」と、敏腕オーナーっぷりを発揮。
 
「来店客数、日々のお金の流れを見れば“このままではマズイ”と、早い段階で危機感を感じるはず。そうしたらセールをしてみたり、イベントをしてみたり、何か手を打ちます。今も毎日、代官山店と西宮阪急店からその日の夜にアップされる売上に一喜一憂(笑)。年数が経てば毎年の傾向があるので、手芸をお休みしたくなる暑い夏やお出かけしたくなくなる寒い冬などお客様の足が遠のくと感じたら、手芸レッスンの数を増やすなどして売上げを確保しています」
 
――この“日々のお金の流れを追う”という感覚は、前職の洋菓子店での経験が活きているそう。
 
「毎日、営業終わりにどのケーキがどのくらい売れたか。人件費がいくらかかったか。30分以上かけて記入していました。そして売上げデータをもとに“どんな日にどんなケーキが売れるか”を多角的に分析。その傾向に従ってケーキをお店に陳列すると売上げが倍増することも!その後事務所勤務では全店舗の売上データを見ていたので、今思えば店舗経営のハウツーを学んだ貴重な経験でしたね。それから百貨店での新店舗立ち上げも経験したので、西宮阪急に出店する時には何かと役立ちました。その時は、当時の上司にも相談にのっていただきました」

▲店内には、イタリアで買い付けしたアンティーク生地や小物がたくさん!

夢を叶えるためには
時に“遠まわり”することも必要

――昨年10周年を迎えたお店は、芸能人や多くの手芸好きに愛される人気店へと成長。自身の経験を振り返り「自分のお店を持ちたい」と夢見る学生に向けて、アドバイスしていただきました。
 
「卒業後は、より自分の夢に近い会社(ショップ)で経験を積みたいと希望される方が多いと思いますが、それが正解とは限りません。一般企業に就職すると社会的なマナー、礼儀作法、表計算ソフト(エクセル)などの一般的なPCソフトの使い方を学ぶことができます。こうしたベーシックなスキルが後々“強み”になるので、必ずしも最短距離でいく必要はありません。私自身、前職の洋菓子店では売上げを見通す力を養い、新卒で入社した印刷会社では、社会人としての対応、そしてどちらの会社でもその仕事の目標に向かい精一杯働く楽しさを学ばせてもらった。それが今の仕事に還元されていると心から感じています」
 
――強みでいえば、“圧倒的に好きなモノがある”というのも、社会人として大きな武器になるといいます。
 
「流行に流されず、自分の好きなモノ、ときめくモノに素直に触れることは、とても素敵なこと。私も大学時代、ヨーロッパの文化や芸術が大好きで、現地を旅したり、本を読んだり、映画を観たり、美術館に行ったり。とにかく夢中で調べていました。好きな世界観が決まっていたおかげで、お店のコンセプトや取り扱う商品のイメージも不思議なくらい自然に導き出せて。心の質を高めてくれるモノは、あなたの引き出しになり、他者(ライバル)との差別化をはかる武器にもなるはず。自立した女性の条件は数ありますが、そういう情熱を傾けられる“何か”がある女性が該当すると私は思います。みなさんもぜひ社会に踏み出す前に、心の根から好きなモノを見つけていただきたいですね」
 
――最後に「これは私の課題でもあるのですが…」と前置きしながら、添田さんが考える女性が働くうえで大切なことを教えていただきました。
 
「“100%を目指さない”というのも大切なこと。決して不真面目に働くのがいいと言っているのではなく、それくらい肩の力を抜いたほうがスムーズに仕事はまわると感じています。すべて背負って自分の中で完結するのではなく、周囲の人の力を借りたほうが結果もよかったりするんですよね。それに男勝りに頑張りすぎると、柔らかさを失い、時に相手を言い負かすことに躍起になってしまったり(苦笑)。女性らしさを活かしてしなやかに社会と関わってきましょう」
 
――柔らかい笑顔が印象的。女性らしさを忘れずに働いている添田さんは、まさに理想の働く女性そのもの! 貴重なお話、ありがとうございました。

▲添田さんの最新刊『切るのも縫うのもカンタン! なのにおしゃれなワンピース』(河出書房新社)

添田社長の1日スケジュール

多忙を極める社長は、どんな1日を過ごしているの? そこには、効率よく働くヒントが隠されていました!

掃除?洗濯などの家事は、朝が勝負。家族を見送った後は自宅にて、事務作業を集中して済ませるそう。お店近くに住んでいるので、通勤は徒歩と羨ましいかぎり。帰り道に、近くのスーパーで買い物して駆け足で家に帰ります。「家庭が一番大事!」と語る添田さんは、夜は仕事しない主義。家族を大切にする姿勢は、ご主人と娘さんも共通のようで、年に1?2回、イタリアに買い付けに行く際は快く見送ってくれるそう。

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