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130th ANNIV. SPECIAL WEB MAGAZINE Advance! キャリア形成と自立志向を「ジブンゴト化」するウェブマガジン

vol.10

卒業生の社長にインタビュー!

共立社長のオキテとホンネ

「寛大で動じず、ポジティブ。女性こそ“器”の大きい人になろう」/森本八月喜さん

2017.07.19

大手建設会社の書類を整理?電子化している「HA2」。在籍するスタッフはなんと全員、“お母さん”! 女性の仕事復帰を後押しし、母の強みを誰よりも信じている森本さんに、女性が社会で輝く秘訣を教えてもらいました。

有限会社HA2 代表取締役

森本八月喜さん

共立女子大学家政学部生活美術学科卒業後、株式会社パルコに入社。店内の内装やテナントリーシング(契約交渉などの店舗開発業務)を手掛ける。その後、大学時代の恩師?稲葉武司先生に誘われて、共立女子大学 住居研究室助手に就任。任期満了後は、MD(マーチャンダイジング)研究所にてコンサルタント業に従事。妊娠?出産を機に、フリーランスへ。2002年、有限会社HA2を設立する。2017年9月に初の著書『できることをできるかたちで ~復興応援 行く?見る?聞く そして続ける~』(パレードブックス)を出版予定。

ママになっても働き続けたい!
妊娠を機に、在宅ワーカーへ

――MD(マーチャンダイジング)研究所のスタッフとして、住宅機器メーカーなどへ売上げ拡大に向けてのアドバイスを行っていた森本さん。「子供が生まれても、ずっと働き続けたい」。そう思い、妊娠を機に独立。自宅でコンサルタント業務をすることにしたそう。
 
「私が子育てをしていた頃は、結婚や妊娠を機に退職する人がほとんどという時代。子供の手が少し離れて『そろそろ働きたいな…』と願っても、昔取った杵柄(=前職で得たスキル)で仕事復帰することは、まだまだ難しくて。先輩ママ達を見て『やりがいのある仕事を長く続けるには、自分で働く環境を整える必要がある』と思ったんです。ワープロとファックスを購入し、『これで何でもできる!』と意気揚々と家で仕事を始めました(笑)」
 
――前職での人脈や経験を生かし、順調に仕事の幅を広げていった森本さん。独立して12年が経った頃、森本さんのキャリアを大きく変える、ある出会いがありました。
 
「当時、共同主催していた在宅ワーク研究会のシンポジウムで、大手建設会社の社員の方に『仕事を受けてもらえないか?』と声をかけていただいたんです。この時受けた『建築資料の整理?電子化』の仕事は、現在のHA2の基盤的業務。そう考えるとシンポジウムでの出会いがなければ、今の会社はなかったと思います」
 
――「建築資料の整理?電子化」の仕事が増えるにつれて手がまわらなくなり、友人?知人に仕事を手伝ってもらうことに。気が付けば、10人を超える集団になっていましたが、当時、会社化するつもりはまったくなかったとか。
 
「起業願望がまったくなくて。なので、長い間私の口座に報酬を振り込んでもらい、スタッフに振り分けていたのですが…。業務が固定化して事業となってきた頃、担当者に『会社化してほしい』と言われたので、仕方なく設立しました(苦笑)。まさか、自分が社長になるなんて夢にも思ってもいませんでしたね」

子育て経験は、社会に貢献できるスキル!
スタッフは、全員“お母さん”

――そうして必要に迫られて(!)設立した会社も、今年(2017年)で15周年を迎えます。現在は、住宅設計やコーディネート、地域の産品を関東圏に広く展開するためのプロジェクトやまちづくりにも携わるなど、業務内容は多岐に渡ります。多くの依頼を受ける理由は、ズバリ“生活者の視点”に立って仕事をすることにあり!
 
「たとえば、商品開発を依頼していただいた時は、日常生活で十分使ってみる。地域おこしの仕事に関わる時は、グルメや買い物を存分に楽しんでみる。常に“生活者の視点”に立つからこそ提案できることはありますし、暮らしの中に埋もれているニーズにも気が付くことができると思います。こうした生活者の感覚を忘れずにいるためにも、何気ない日常生活をおざなりにせず、暮らしを全うする。そう心がけています」

▲山口県?萩ガラスの販路拡大のためのプロジェクトを展開。萩ガラスのアクセサリーは、HA2オリジナル


――森本さんの言葉に、笑顔で頷くスタッフの皆さん。そういえば、オフィスを見渡すと女性ばかり! 聞けば、HA2には、かつて建築?住居の分野で活躍していた“お母さん”が集まっているそう。
 
「私自身、子供を産み育てる中で、親を介護し、そして看取る中で、企業にいては見えないものがたくさん見えた。だからこそ、育児や介護での経験は、社会に貢献できるスキルである、と思うのです。同時にたくさんの役割を持つママは、複数のタスクを平行して行うのが得意だし、計画的に時間を使うのも上手! 前職でのスキルに、このような母親としての経験や能力が加われば、鬼に金棒でしょう(笑)。こうした想いから、子育て経験者を積極的に採用しているんです」
 
――HA2では、働くママや家族の介護に奮闘するスタッフを応援するために、ワークシェアというシステムを採用しています。
 
「仕事の規模に関わらず、必ず2、3人で業務をシェアしています。ひとつの仕事に複数人が関わり、同時に“お互い様”というマインドが共有できているので、子供が急に熱を出すなどの不測の事態が起きてもフォローし合えます。自分で言うのもナンですが、これまであまり大きなピンチもなく、順調に事業を展開してきたのですが…。実は今、人材の確保にちょっぴり苦労しています。ママ候補生のみなさんも、ぜひ一緒に働きませんか? 共立出身者も5名在籍していますよ(笑)」

雑務に追われず、やりたいことを。
時間をマネジメントできる人は、軽やか!

――女性であることを言い訳にせず、強みにかえて、仕事に還元している森本さんはまさに理想の存在! そんな森本さんが考える、「自立している女性」とは?
 
「人としての自立は、自分で時間の組み立てができる人でしょうか。5年後、10年後、自分がどうありたいかを考え、今やるべきことを具体的にピックアップする。時間の計画を立てるということは、自分のことはもちろん、身近にいる大切な人との未来をきちんと見つめられている証拠だと思うのです。また、時間をマネジメントできている人は、精神的にも軽やか。私の世代は親の介護をしている人も多いのですが、目の前の雑務に追われて、駆け足で過ごすのではなく『木曜日の午後だけは、主婦業も介護もお休みする!』『責任ある仕事は、調整しながら続ける』などと計画を立てている人は、心にゆとりがあり前向きです。日々の時間をどう捉えるかで、人生は大きく決まると思います」
 
――続けて、「女性こそ、“器”は大きいほうがいいですね」とニコリ。
 
「女性は、母、妻、嫁、娘、働き手と役割が多いので、日々予期せぬ出来事が起こるもの。“器が大きい、器が小さい”という表現は、男性によく使われる表現ですが、女性こそ突発的な事態が起きても動じず、大きい心で物事を受け止める力が必要。そしてフレキシブルに対応できる“器の大きさ”が大切だと思います」
 
――どうすれば、自立した「器の大きい女性」になれますか?
 
「大学時代はフリーな時間も多く、時間の組み立てを自分で一番しやすい時期。興味のあること、人に会うこと、素敵なものを見ること。これらを積極的に取り入れてほしいと思います。そのためには、文化祭に行ってみたり、インカレのサークルに参加したり、他大学の学生と交流を持ってみるのも手。そして、旅に出てみる。私は大学3年の春休みに、親友と2人で一か月以上かけてヨーロッパ一周をしました。予定を決めないで出かけた旅の中で出会った人たちとは、今でも交流があり私自身の財産になっています。ひとつのコミュニティに深く携わることも素敵だけど、環境が違う人と接することで、視野はぐんと広がる。自分とは違う価値観に出会った時が、自分の“器”を広げるチャンスとなりますよ」

▲書類整理がメイン業務だけあって、オフィスの整理整頓もばっちり!


――インタビュー中、『子供が熱を出したみたいで…』と急ぎ足で帰るスタッフを『お大事にね』と送り出す森本さん。その横顔は温かく、器の大きさを感じました。貴重なお話、ありがとうございました!

森本社長の1日スケジュール

多忙を極める社長は、どんな1日を過ごしているの? そこには、効率よく働くヒントが隠されていました!

赤坂と青山の2カ所にオフィスを設けているので、午前と午後で働く場所を変えているそう。ランチはコミュニケーションを兼ねてスタッフといただきます。2人の娘さんは独立しているため、現在は夫婦2人暮らし。朝はルーフバルコニーの草木の水やり、仏壇の花の水替えが日課。夜は、お酒のおつまみをたっぷり作って大好きなビールを堪能。美味しく飲むために、夕食前にお風呂に入るのが森本さんのこだわり(笑)!

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