更新日:2016年04月10日
文芸メディア専修
受験生へのメッセージ(下村 陽子)
文学?芸術について広い教養を身に付けながら、社会的なメディア機構である図書館について学ぶ
公共図書館の教育的サービス、図書館による読書活動の支援、明治大正期の児童出版文化
図書館は長い間、人々と図書等のメディアを結び付ける“場”としての役割を果してきました。あらゆる人々が利用できる公共図書館では、利用者の読書活動を支援するサービスを組織すると同時に、コミュニティの読書に関わる活動を支援しています。生涯学習に直接結びつく個人の読書活動の支援の在り方に始まり、図書館がこうした役割をどのように果たしてきたのか、またこれからどのような役割を求められているのか、図書館による読書活動の支援に関心を持っています。
また、図書をはじめとするメディアは読書支援における重要な要素です。特に、明治?大正期の児童出版文化に関心を持っていますが、雑誌という新しいメディアが重要な役割を果したことはよく知られています。当時の教育制度の整備と関わって少年、少女という読者層の存在が広く認知されるところとなり、この層を対象にした新しいメディアとしての雑誌が次々と出版されました。明治期には、日本で初めての近代図書館が創設され、やがて読書支援サービスが組織され始めます。当時の出版状況を踏まえて、図書館のコレクションの構築と関連付けて雑誌メディアの普及の状況を明らかにすると同時に、雑誌というメディアの誕生?普及と少年、少女の読書活動の関係を考えていきたいと思っています。
文芸学部では、従来の文学と芸術について深く学ぶことに加えて、文学?芸術作品が生み出されてから広く人々伝えられるまでの過程に常に介在するメディアに着目し、文学?芸術とメディアの関係について学ぶことができる科目が用意されています。文学?芸術について広い教養を身に付けながら、伝統的なメディア機構としての図書館について学び、図書館の専門的職員の資格を取得したいと希望する場合には、前述の図書館司書課程?学校図書館司書教諭課程が用意されています。
課程を履修する学生には、資格取得という明確な目標がありますが、資格取得を目指す動機は、取れる資格は取っておこうというものから本格的に図書館員の職を目指そうというもの、将来仕事の役に立ちそうだというものまで様々だと思います。近年、正規の図書館職員としての採用は厳しい状況が続いていますが、少数ながら国家Ⅱ種試験(国立大学や国立機関の図書館職員採用試験)、都立図書館をはじめ公共図書館の採用試験に合格する学生も出ています。
課程のカリキュラムでは、情報?知識を収集蓄積しそれを人々に還元する社会的装置としての図書図書館の仕事に必要な知識や技術について学びますが、それらは図書館における実務に役立つだけではありません。情報?知識を扱う社会的機関として図書館が長い時間をかけて築き上げてきた知識や技術は、今注目されている情報リテラシーにそのままつながるといえます。求める資料?情報を確実に入手できるよう探索能力を身に付けることは、情報リテラシーの一環としてすべての人に有用なものといえます。