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国際学部

Faculty of International Studies

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国際学部ニュース詳細

更新日:2020年01月31日

研究紹介

【国際学部】リレー?エッセイ2019 (21)西村めぐみ「ノルウェーの街角から -地道な努力を重ねる国にもたらされた富を皆の幸福のために使った国」

ノルウェーの街角から―地道な努力を重ねる国にもたらされた富を見なの幸福のために使った国

西村めぐみ


-街全体がセレクトショップ-

    Mercedes-Benz, Audi, BMW, Volvo, Ferrari, Tesla, そしてたまに Toyota 、冷たい雨の降る10月の道路を高級車が次々と走り抜けていく。先日学会で訪れたノルウェーの首都オスロで見た光景だ。こんなに高級車ばかりが続けて走り去っていく姿は東京の一等地と呼ばれる場所でも目にしたことがなく到着して早々目が点になった。1人あたりのGDPが世界第42位の日本の約1.68倍の富を造る世界第11$71,800(2017年推計値CIA The World Factbook) の国ともなると、かくも違うのか?


 高級なのは車ばかりではない。街には、デンマーク王室御用達のデパートが建ち、道行く人々はごく当たり前にブランド品を身に着けており、ショッピングモールからスーパーまで売っているものは世界の国々から輸入してきた一流品ばかり、街全体がセレクトショップといった様相だ。普通のスーパーで売っている塩でさえ英国王室御用達の塩であったりする何てこった、パンナコッタのオスロしい国、それがノルウェーの第一印象であった。


-ノルウェーの奇跡-

 今でこそ世界でも有数の豊かな国であるが、昔、ノルウェーは貧しかったという。ノルウェーがスウェーデンから独立した1905年の時点では、ヨーロッパの貧しい国の1国に過ぎず(Klette 2000)、誰も今日の姿を想像した人はいなかったというくらいに、世界の果てにある遅れた国であった(Larsen 2001)という。では、20世紀の間にノルウェーに何が起きたのであろうか?


   黒いダイヤとも呼ばれる石油が1969年に発見されたことが、ノルウェーの奇跡の要因だと信じていたのであるが、石油の発見だけがどうやらノルウェーの今日の繁栄の要因ではないようなのだ。20世紀のノルウェーの経済成長の要因を分析したLarsen(2001)の研究を見ると、ノルウェーの今日の繁栄の陰には、突然降ってきたオイルマネーに舞い上がらず、「石油の富を皆で享受するための平等主義に基づく社会?経済制度」を創り、そして「ヒトづくり」を地道に行うことによって、石油を自分たちの手で磨いて本当に黒いダイヤに変えたノルウェーという国と人の姿が浮き彫りになってくる。

 




-ノルウェーの奇跡の布石  「富を皆で分かち合う社会?経済制度」の構築-

 今日のノルウェーの社会に深く浸透する富を皆で分かち合うことを良しとする「平等主義」は、何も最近始まったものではなく遠い昔、バイキングの時代に遡るという。Recknagel (2014)によると、海洋貿易/海賊行為で得た富を仲間で分け合っていたバイキングの時代からノルウェーの社会では、平等主義的慣習が社会に根付いていたという。このような平等主義的慣習、産業革命に入り実際に天然資源による収入を全ての国民に分かち合うよう義務付けた法律が出来るなどしたことにより、さらに強化されて継承されていった。(Recknagel 2014) 


 富を皆で分かち合うという慣習は、今日ノルウェーの賃金決定の方法にも見られる。ノルウェーにおける賃金は、大企業?中小企業さまざまな企業で働く労働者が一堂に集った労働組合と企業組合による団体交渉によって決定される。この労使間団体交渉という仕組み自体は、日本にある春闘と同じように見えるが、ノルウェーの場合、政府が労使間の交渉を監視し必要に応じて介入まで行う権限があるため、稼いだ富が企業に偏ることのないような仕組みとなっている。経済学を少しでも学んだことのある方は、ここで、あれあれ?と思うだろう。なぜなら、経済学では、民間の自由競争を促すことが最も効率的な結果となるため、市場の失敗(欠落)が起こるような状況でもない限り、政府の民間経済への介入は良いことだとは考えないのが原則であるからである。


 一般的に、国の経済制度は、政府が全て管理する「計画経済」か、原則として民間の自由競争に任せて政府が民間経済には極力介入しない「市場経済」かに分類される。しかし、ノルウェーを始めとする北欧諸国やドイツでは、市場経済の下で民間企業同士が自由競争を行いながらも競争環境や競争の結果が、自らの価値観?倫理観から逸脱するような場合は、政府が民間に躊躇なく介入して軌道修正を行う 「coordinated market economy” 調整型市場経済」(Hall and Soskice 2001)という、「市場経済」と単純に分類することが出来ない制度を採用している。


 今日でもノルウェーの街中あちこちで政府が民間経済にグイグイ介入している影響があちこちで見られる。例えば、店舗の営業時間は、一部の例外を除き日曜日は営業禁止で、スーパーマーケットやデパート等も日曜日には冗談ではなく本気で閉まる。キリスト教の祝日であるからというのが元々の理由であると思うが、ノルウェーの人に聞くと、日曜日は家族と過ごす時間を確保してもらうために休業にしていると言う。なるほど、家族と過ごす時間を皆で確保するための日曜日の休業なら、少し不便でも皆我慢出来るのかもしれない。


 アルコールを販売する時間は、法律でさらに厳しく定められている。アルコールの販売時間は、月曜-金曜までは18時、土曜は15!(アルコール度数の低いビールなどのみ18時まで販売が許可)日曜はもちろん販売禁止と決められている。(学会が終わってからワインショップに行くと必ずシャッターが閉まっていて呆然としたこと、滞在中ワインを結局1度も買えなかったことは私のノルウェーの1番の悔しい思い出となった。) 


 少し話が脇道に逸れたが、ノルウェーの社会に形成された富を皆で分かち合うことを良しとする「平等主義」、これを実現するために政府が積極的に民間経済に介入する「調整型市場経済」という制度の組合せが最大の威力を発揮し、ノルウェーの今日の繁栄に繋がった出来事が1969年の黒いダイヤ=石油の発見である。石油の発見は、遅れた辺境の国であったノルウェーの運命を一変させた。ノルウェーの西海岸には、70余りもの石油基地が建設され、石油の採油?輸出が始まった。石油の生産?採掘には多種に亘る産業のサポートが必要不可欠なため、石油産業の誕生はノルウェーの、他の産業にも恩恵をもたらすようになった。(Recknagel 2014)


 これだけ見ると、単に石油の発見という幸運だけがノルウェーの今日の繁栄に繋がったという単純な結論に結び付けてしまいそうだが、ノルウェーの本領が発揮されたのは、ここからである。まず、石油基地を所有するのは、ノルウェーの国営企業か、政府からライセンスを供与された外国の民間企業のみで、(Recknagel 2014) 民間の大企業が富を独占することの無いよう政府がバッチリ管理した。そして、石油生産に関わる企業には、通常の法人税22%に、特別税56%がプラスされた合計78%! の税金を課し(20201月時点)、石油が発見された後もバイキング時代からの富の分かち合いの精神が廃れることなく生き続けている。これだけでも、他の産油国ではあまり見られない政策のオンパレードであるが、ノルウェーが見事だったのは、「オランダ病」を先見の明があるファンタスティックな政策を取ることによって防いだことであった。


 「オランダ病」とは、ノルウェーと同じく1960年代に北海で天然ガスを発見したオランダにおいて、天然ガスの輸出で栄えることによってオランダの通貨ギルダーの価値が高くなり、製造業などの他の産業が価格競争力を失い衰退したという出来事から、「天然資源の発見によって同じ国のその他産業に衰退をもたらす現象」のことを指す。ノルウェーも最初の4年間だけ「オランダ病」を体験した。(Recknagel 2014) 石油が発見された直後、政府には巨額の石油収入?税収がもたらされ、政府はその収入を公共事業や補助金としてバラまく拡張的財政政策を取った。その結果、石油の発見以後、ノルウェーでは賃金や通貨クローネの上昇が続き、他の輸出産業に壊滅的打撃を与えるオランダ病に罹ってしまった。


 そこで、ノルウェー政府は、これまでどの産油国も行うことのなかった大胆な政策を取った。石油産業から政府にもたらされる収入を全て使うことを自ら禁止し、石油収入のうち公共事業などの財政政策に使うことの出来る上限を4%と決めた「ケチケチ財政政策」(失礼な表現でごめんなさい)180度政策転換したのである。(Recknagel 2014) 


 では、このキリギリスがアリに突然変身したような「ケチケチ財政政策」の結果、残った石油収入96%を政府はどうしたのか最初は、石油の増産や新たな油田探索のための資金として使っていたが、それも有り余るほどになっていた。そのため、1990年に石油で得た富を現在の国民全員だけでなく将来の国民全員とも分かち合うために、ノルウェーは政府年金基金を設立するという(Griffin 2019) これまたファンタスティックな政策を取った。石油収入の大部分を吸収するノルウェー政府年金基金は、世界中の様々な金融商品や企業に投資し運用益を上げており、現在、そして将来世代の全国民が年金という形で石油の富を享受する機会を与えるという役割を果たしている。Recknagel (2014)によると、この政府年金基金は、先述の「オランダ病」を防ぐ役割も上手く果たしているという。石油所得の大部分を年金基金にプールし将来のために取り置くことにより、石油所得を現在は使えない、すなわち現在の経済に影響を及ぼさないお金に変えてしまうと、巨額の石油収入が現在のノルウェーの通貨価値や他の産業に影響を及ぼしにくくなる。そのため、年金基金は「オランダ病」を防ぐ緩衝材の役割をも果たしているというのだ。なるほど、先見の明があるファンタスティックな政策である。


 現在、ノルウェーの年金基金は世界最大級の規模を誇り、資産規模は$1兆ドル=¥109兆円と推計されている。(Griffin 2019) また、資金の投資先も社会的責任CSRを順守する企業しか投資しない(Griffin 2019)というのだから、隅々までノルウェーの価値観が行き渡っている基金である。


 大分長くなってしまったので、一言で要約すると、富を皆で分かち合うことこそが大切であるという価値観が共有され、その価値観と違わない社会を構築するために政府が民間経済に介入することを許容する「調整型市場経済」という下地が形成されていたノルウェーであるからこそ、突然石油が発見されるという国の運命を変える出来事が起こっても、「オランダ病」や一部のグループに富が集中するという産油国がよく陥るワナにもかからず格差の少ない社会を実現し、皆で豊かになった結果、冒頭で述べたような高級車やブランド品を多数の国民が楽しむことの出来る状況となったのである。実際、国内の所得の不平等度を測るジニ係数を見ても、ノルウェーは、世界で13番目に所得の不平等度が低い国という地位にいる(OECD 2010) [因みに158か国中、日本はちょうど真ん中の79位、アメリカは118位である。]

 

そうはいってもやはり、決め手は人 -ノルウェーの奇跡の背後に国民あり-

 20世紀初め時点では、ヨーロッパの果てに位置する遅れた国であったノルウェーが世界でも有数の豊かな国になったノルウェーの奇跡は、石油の発見という幸運のお陰だけでは決してない。(Larsen 2001) 実際にノルウェーのGDPの構成要素を見ると、石油産業を含む製造業がGDPに占める割合は33.7%だけで、GDP64%がサービス業、2.3%が農業によって占められているため(2017年推計値CIA The World Factbook)、石油関連産業以外の産業の発展なしには今日の繁栄はあり得なかった可能性を示唆している。


 一般的に、経済が成長するためには、技術進歩などの他に (労働者がどれ位GDPを生み出す力があるかを教えてくれる)労働生産性を上昇させることが1つの鍵となることが知られている。また、この労働生産性は、教育?知識?経験などによって成る「人的資本」を蓄積することによって上昇することも周知されている。


 これらを踏まえ、ノルウェーを概観すると、「ヒトづくり」を行い、人的資本を地道に蓄積してきたこの国の姿が浮かび上がる。ノルウェーが、初等?中等?高等教育に支出する金額はGDP6.3%で、世界第一位である。(2016年 因みに日本はOECD35か国中35位の2.9%である国ぐるみで教育に力を入れ、所得格差が教育格差に繋がらないようにとの配慮が数字からも伺い知ることが出来る。 この教育に力を入れる政策が功を奏してか、ノルウェーは、国連開発計画(UNDP)が平均寿命?教育水準?所得水準を基に算出するHDI(人間開発指数)1996年以降、一度たりとも首位を明け渡すことなく世界一位に君臨している。(ちなみに日本は201818位である)


 人々の教育水準の高さは街中で実感出来る。日本では、英語を流暢に話す人を見付けることの方が難しいが、ノルウェーでは、老若男女?職業を問わず誰も彼もが完璧な英語を話すことに驚く。ノルウェーの人が完璧に英語を話すこと理由は、ノルウェーの人口はたった534万人のため英語を話すことが出来ないと生き残れないのではという危機感が背後にあるという説、子供のころから英語のアニメを字幕付きで見ているからという説など色々あるようだ。


 ノルウェーの教育重視の政策は、人的資本の蓄積にも一役買っているとみられ、労働生産性も高い値を示している。ノルウェーの1時間当たりの労働によって生み出される労働生産性は、$85.03でアイルランド、ルクセンブルクに続いて堂々の世界第3位で、長く労働生産性の向上が課題だと言われ続けている第20位日本の労働生産性 $45.88の約1.85倍である。(OECD 2018)


 ノルウェーが「ヒトづくり」を地道に行ってきたということは、上述したようなデータにも表れているが、街に出ると肌身を通じてノルウェーの人の凄さ、優しさが身に染みる。店舗?飲食店どこに入っても、どんなスタッフも、こちらの質問に答えられるというレベルを超越したプロであり、またまた目が点になる位に驚くほど親切な対応をして下さる。例え、パートタイムや学生アルバイトとして働いていても誰がアルバイトなのか全く分からない位、プロフェッショナリズムが根付いた働きぶりで、自分の仕事に誇りを持って働いている様子が非常に印象的であった。レストランに行くと、頼んだ一品のメインの品物から付け合わせのジャガイモまで産地から料理法まで細かく丁寧な説明に感動し、シェフ手作りのフラットブレッドというパンに感動していると、帰りにタッパーに包んだものをお土産に持たせてくれるという親切にまたまた感動した。(ノルウェーは、イモ天国でスープにもジャガイモ、メインの付け合わせにもジャガイモのピューレが出てきたりして、ジャガイモがありとあらゆる形に変身しながら何度もテーブルに登場!する) 滞在中の宿泊先の近くにあり、毎日のように通ったパン屋さんは、シナモンロール(ノルウェー名KANELBOLLE)が大好物であることを覚えてくれており、私がお店に入ってくるとすぐにキッチンに回ってシナモンロールの焼き立てがないかチェックし、ホカホカを持ってきてくれるという経験をした。(毎日シナモンロールを食べ、お腹もシナモンロールみたいになったのは、トホホである。)


 極めつけに、滞在先の宿で火災報知機が鳴り、外に避難しなければならなくなったときに知り合ったノルウェーの大学生のお嬢さんとそのお母さんが、避難警報が解除されたのち、お二人の故郷ロフォーテン諸島のサーモンを沢山日本へのお土産にどうぞと持って来て下さったりした。これが、また人生でこんなサーモンは食べたことのないという位美味しく、温かかった。


 最初は、ノルウェーの物質的な豊かさに驚いていただけであったが、人の心の豊かさ?優しさに心を打たれた。モノだけでなく、心も豊かな国が真の先進国であることをノルウェーに教えてもらった気がした体験となった。

 

 

参考文献

CIA World Factbook (2019) “Norway Economy 2019”. 2019 CIA WORLD FACTBOOK AND OTHER SOURCES

   https://theodora.com/wfbcurrent/norway/norway_economy.html (2020121日参照)


Larsen, Erling R (2001) “The Norwegian Economy 1900-2000: From Rags to Riches A Brief History of Economic Policymaking in Norway.”

   Economic Survey 4, pp22-37.


Recknagel, Charles (2014) “What Can Norway Teach Other Oil-Rich Countries?”

   RadioFreeEurope RadioLiberty,  November 27, 2014.

  https://www.rferl.org/a/what-can-norway-teach-other-oil-rich-countries/26713453.html (2020121日参照)